肥満・インスリン抵抗性を背景として、耐糖能異常・高血圧・高脂血症などの動脈硬化危険因子が重積することにより、動脈硬化性疾患(虚血性心疾患、脳血管障害)の危険度が高まることがわかり、今日ではメタボリックシンドロームと呼ばれるようになった。2005年4月に発表されたメタボリックシンドローム診断基準によると、腹腔内脂肪蓄積を反映するウエスト周囲径増大を認め、空腹時血糖値110mg/dL以上、高血圧、中性脂肪150mg/dL以上またはHDLコレステロール40mg/dL未満のいずれか2つに該当すればメタボリックシンドロームと診断される。一方、DECODE Studyや舟形町研究など国内外の疫学研究により、糖負荷後血糖は心血管死亡の予測因子となるものの、空腹時血糖だけでは心血管病のリスクを予知できないことがわかり、血糖管理に際して、空腹時血糖とともに食後血糖が重視されるようになってきた。メタボリックシンドロームの診断に際しては、この食後血糖が考慮されていないが、実際の症例では空腹時血糖上昇より食後血糖上昇が先行している場合が多いと考えられる。こうした症例では空腹時血糖上昇がわずかであっても、肥満・インスリン抵抗性の是正を図り、食後高血糖・高血圧・高脂血症の管理を積極的に進める必要がある。
メタボリックシンドロームは糖尿病発症の危険因子でもあり、血圧・脂質の管理に際して耐糖能に悪影響を与えない薬剤選択が肝要である。スタチン系薬剤は脂質改善作用に加えて、抗炎症作用・血管内皮機能改善作用など多面的効果を有し、メタボリックシンドローム症例で多く使用されるものであるが、糖尿病新規発症抑制効果があるものとそうでないものが報告されている。本セミナーでは、耐糖能異常を対象にライフスタイル介入群およびライフスタイル介入に加えてピタバスタチンを投与した群の2群間における2型糖尿病の新規発症を比較検討するJ-PREDICT研究についても紹介する。
以上、メタボリックシンドロームからみた耐糖能異常の病態と治療戦略について述べたい。
座長略歴 赤沼 安夫(あかぬま やすお)
| 昭和34年 | 東京大学医学部卒業 |
|---|---|
| 昭和35年 | 東京大学医学部第三内科入局 |
| 昭和40年 | 米国ワシントン州立大学留学 |
| 昭和55年 | 東京大学医学部第三内科講師・病棟医長 |
| 昭和59年 | 朝日生命糖尿病研究所所長 |
| 平成2年 | 第33回日本糖尿病学会年次学術集会会長 |
| 平成4年 | 日本糖尿病学会 理事長(〜平成14年5月) |
| 平成10年 | 東京女子医科大学客員教授 |
| 平成16年3月 | (財)朝日生命成人病研究所所長 |
| 平成17年6月 |
(財)朝日生命成人病研究所名誉所長 現在に至る |
演者略歴 寺内 康夫(てらうち やすお)
| 昭和63年3月 | 東京大学医学部医学科卒業 |
|---|---|
| 昭和63年6月 | 東京大学医学部附属病院分院内科(研修医) |
| 昭和63年12月 | 東京大学医学部附属病院内科(研修医) |
| 平成2年6月 | 朝日生命糖尿病研究所附属丸の内病院内科 |
| 平成3年7月 | 熊本大学医学部遺伝医学研究施設細胞遺伝部研究生 |
| 平成4年6月 | 東京大学医学部附属病院第3内科 |
| 平成10年5月 | 東京大学医学部附属病院糖尿病・代謝内科 |
| 平成14年4月 |
東京大学医学部附属病院文部科学教官(助手) (糖尿病・代謝内科) |
| 平成16年1月 |
東京大学医学部附属病院 病院講師 (糖尿病・代謝内科) |
| 平成16年4月 |
東京大学医学部附属病院 特任講師(病院) (糖尿病・代謝内科) |
| 平成17年1月 |
横浜市立大学大学院医学研究科 分子内分泌・糖尿病内科学教授 |
| 平成17年12月 |
横浜国立大学非常勤講師(兼任) 現在に至る |








