<座長>神戸大学大学院 医学系研究科
糖尿病・代謝・内分泌内科学 教授
春日雅人 氏
<演者>
東京大学大学院 医学系研究科
糖尿病・代謝内科 教授
門脇 孝 氏

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Medical View Point 2007年09月10日号 より転載 |

<座長>神戸大学大学院 医学系研究科
糖尿病・代謝・内分泌内科学 教授
春日雅人 氏
<演者>
東京大学大学院 医学系研究科
糖尿病・代謝内科 教授
門脇 孝 氏
日本における糖尿病患者は増加を続けており、また、糖尿病患者の心血管イベント発生は1,000人・年あたり16.7件と、欧米に匹敵する頻度になっている。こうした中、厚生労働省が推進する「健康フロンティア戦 略」の一環として、J-DOIT(JapanDiabetes Outcome InterventionTrial)が昨年度から開始された(表)。今回はこの試験に関連して、一次予防を糖尿病発症予防、二次予防を糖尿病の早期発見と進展抑制、三次予防を合併症予防とし、各段階別における治療概念についてエビデンスをもとに概説する。
| 表 わが国から発信されるエビデンスを目指す糖尿病戦略研究 Japan Diabetes Outcome Intervention Trial; J-DOIT |
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一次予防において、生活習慣介入が最もすぐれた戦略であることは、耐糖能異常(IGT)を対象にした国内外のスタディで認められている。たとえば、米国のDiabetes prevention program(DPP)では、5%以上の減量で糖尿病発症リスクが58%低下し、日本の小坂らのデータでは3%程度の体重減少で60%以上のリスク低下が得られている。
また、生活習慣介入に加えて、薬物介入も糖尿病発症リスクを減少させることが多くのスタディで報告されている。その中には食後高血糖に対する介入で、糖尿病発症だけでなく心血管疾患の発症をも抑制されたというSTOP-NIDDM試験など、興味深いものがある。糖尿病薬以外のARBやACE阻害薬、スタチンなどでも糖尿病発症抑制が報告されており、日本では現在、IGTを有する日本人の高コレステロール血症患者(約1,240名)を対象に、ピタバスタチンの糖尿病発症への影響を検討すべくJ-PREDICTが進行中である。
一次予防の対象となるポピュレーションの選定には、メタボリックシンドロームによるスクリーニングが有用である。2008年からはメタボリックシンドロームに着目した健診・保健指導が始まるが、ここでは、追加リスクの条件として「空腹時血糖値100mg/dL以上またはHbA1c 5.2%以上」という、従来のメタボリックシンドロームの診断基準よりも低い数値が設定されている(図1)。今後、こうした数値に基づく鋭敏なスクリーニングにより、効果的な一次予防が実践されていくことが予測される。

糖尿病管理における経口血糖降下薬の選択では、糖尿病の進行抑制に関する長期予後や、長期の血糖コントロールなどを考慮する(図2)。長期血糖コントロールについては、インスリン抵抗性改善作用を持つ薬剤について好ましい結果がPROactive試験などで報告されている。
国内では、空腹時血糖が110?125mg/dLの境界領域のポピュレーションの中から75gOGTT2時間値が200mg/dL以上の早期糖尿病患者を拾い上げ、各種経口糖尿病薬の進展抑制効果を検討する日本早期糖尿病進展抑制試験(JEDIS)が始まっている。

糖尿病の合併症予防には、血糖、血圧、脂質の三大危険因子の管理が重要で、大血管症の発症予防には特に厳格なコントロールが求められる。しかし、これまで日本では、三大危険因子すべてに介入した検討は行われていなかった。
今回我々が取り組んでいるJ- DOIT3は、高血圧、脂質代謝異常を持つ高リスクの2型糖尿病患者を対象に、強化療法群の目標値をHbA1c 5.8%未満、血圧120/75mmHg未満、LDLコレステロール80mg/dL未満として大血管症および死亡への影響を検討するものである。これまでに国内85施設の協力を得て、1,046例が登録されている(2007年5月22日現在)。本試験は、強力な生活習慣の改善と血糖、血圧、脂質の厳格な管理による合併症予防を検討する世界で初めての大規模臨床試験であり、日常診療における糖尿病合併症抑制のための様々な疑問に対するエビデンスになりうるものと期待される。
近年、糖尿病関連の遺伝素因の解明が進んでいる。すでに、PPARγ遺伝子のプロリン12型、アディポネクチン遺伝子のSNP276型、膵β細胞関連のHNF-4αの遺伝子多型や TCF7L2のTT遺伝子型などが報告されているが、その後も次々に新たな候補が報告されている。こうした遺伝素因の解明により、テーラーメイド医療の実践が具体性をおびてきた。
メタボリックシンドロームに基づく健康指導、J-DOITなどのエビデンスの蓄積、そして遺伝素因の解明など、新しい糖尿病医療への動きは着実に始まっている。
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