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Medical Tribune特別企画

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冠動脈疾患ハイリスク患者のコレステロール管理の重要性 PDF
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Medical Tribune 2005年05月26日号特別企画より転載

冠動脈疾患ハイリスク患者のコレステロール管理の重要性

Brigham and Women's病院
Peter Ganz氏

座長/日本大学 上松瀬 勝男氏
座長/日本大学 上松瀬 勝男氏

第69回日本循環器学会総会・学術集会において,「冠動脈疾患ハイリスク患者のコレステロール管理の重要性」と題したランチョンセミナーが,日本大学 上松瀬勝男氏の座長のもと,開催された。近年,積極的な脂質低下療法による冠動脈疾患の二次予防に関して,様々なエビデンスが確立され,“the lower the better”も一般に認識されるようになった。そこで,動脈硬化性疾患に対するスタチンの抗炎症作用も含め,冠動脈疾患のハイリスク患者における脂質管理について,Peter Ganz氏にご解説いただいた。

ハイリスク患者はコレステロール値が低くても治療が必要

 ご存じのように,全米のコレステロール教育プログラム(NCEP ATP V)で提唱しているLDL-コレステロール(LDL-C)治療目標値は,患者のリスクの程度により設定され,冠動脈疾患のハイリスク患者であれば, 100mg/dL未満が目標になります(表1)。2001年に発表されたこのガイドラインは,その後4年間に発表された様々なスタディの結果に基づいて,今後改訂される予定ですが,LDL-C値をどの程度まで下げるべきかという一般的な認識も変わってまいりました。そこで本日は,スタチンによる冠動脈疾患の二次予防に関する最近のエビデンスをご紹介しながら,新しい概念である高コレステロール血症の積極的治療の重要性についてお話しいたします。

 最初にご紹介しますのは,イギリスで実施されたHPS(Heart Protection Study)です。冠動脈疾患または冠動脈疾患以外の閉塞性動脈疾患の既往もしくは,糖尿病,高血圧の合併患者を対象に,5年間追跡したものです。患者数が2万名余りと,母集団のサイズが大きく,統計学的に意味のあるサブ解析を行えたことがこのスタディの重要な点です。サブ解析の結果,スタチンの主要血管イベント発症率は,スタチン投与前のLDL-C値に関係なく24%減少しました。また,患者1名を救うために必要な治療患者数NNT(Numbers Needed to Treat)は,LDL-C値が100mg/dL以下の患者では22と,かなり良い数字が得られました。つまり,スタチンはLDL-C低値の患者のイベント率を下げるだけではなく,コスト的にも有用な治療法であることが明らかとなりました。冠動脈疾患あるいは同等のリスクがある患者に対しては,たとえ LDL-C値が低くても,スタチンによる治療を行った方がよいという結論が出たわけです。

スタチンによる積極的な脂質低下療法は冠動脈疾患の二次予防に有効

 次なる問いは,スタチンによる治療はどの程度積極的に導入し, LDL-C値をどこまで下げればよいかということです。そこで,スタチンを投与して積極的にLDL-Cを低下させた群と,通常のLDL-C低下療法を行った群とで比較したエビデンスをいくつかご紹介します。

 まずは,プラークを頸動脈内膜中膜厚(IMT)として評価した2つのスタディ(ARBITER:Arterial Biology for the Investigation of the Treatment Effects of Reducing CholesterolとASAP:Atorvastatin vs Simvastatin on Atherosclerosis Progression study)では,積極的にLDL-Cを低下させた群の方がIMTが減少し,有意な群間差が認められました。

 またIVUS(intravascular ultrasound)を使って冠動脈プラーク容積を測ったREVERSAL(Reversal of Atherosclerosis with Aggressive Lipid Lowering)では,スタチンの18ヵ月間投与により,通常のLDL-C低下療法群でプラーク容積が2.7%増加した一方,積極的にLDL-Cを低下させた群では0.4%減少し,有意差が認められています。18ヵ月で3%の変化は,一生涯で考えれば大きな変化です。年利3%の当座預金口座として考えた場合,1年では大した金利ではないものの,生涯にわたるとかなりの金額になるのと同じことです。

スタチンの抗炎症効果も動脈硬化性疾患の二次予防に重要な役割を果たす

 REVERSALでは,予期せざる発見がありました。それは炎症マーカーであるCRP値の低下も,動脈硬化の二次予防に重要であるということです。LDL-C値とCRP値に関して,個々の患者の変化値が中央値よりも多いか少ないかでプラークの大きさをみたところ,LDL- C値とCRP値のいずれもが中央値を下回った場合にプラークが最も小さくなり,CRP値の変化だけをみた場合,変化が中央値を下回った場合にのみプラークが小さくなりました。また,LDL-C値やCRP値が低いほど動脈硬化の進行が遅くなるが,両者の変化は独立したものであり,相関はないことも示唆されています。またLDL-C値とCRP値の両方を減らすことが臨床結果と関連していることは,PROVE IT(Pravastatin or AtorvastatinEvaluation and Infection Therapy)においても証明されています。

強力なLDL-C低下作用を有しCRPも低下させるピタバスタチンは冠動脈疾患の治療に有用

 冠動脈疾患の治療選択肢が広がり,患者さんの治療の道がたくさん開かれるようになった現在は,大変エキサイティングな時代になったといえるのではないでしょうか。スタチンも複数の薬剤が発売されていますが,いずれの薬剤を用いたとしても,「積極的に患者の脂質管理を行いましょう」ということを述べたいと思います。現行のガイドラインでは,冠動脈疾患のハイリスク患者に対するLDL-C目標値は100mg/dLですが,今後はもっと低い目標値が設定されると思います。その点,LDL-C低下作用が非常に強い薬剤であるピタバスタチン(図1)は,冠動脈疾患のハイリスク患者の治療に有用であり,さらに血清脂質の質を総合的に改善させることで動脈硬化の予防が期待できる薬剤といえるでしょう。実際,2型糖尿病患者のRLP-コレステロール,small dense LDLを減らし,LDL粒子径を増加させることが報告されています(図2)。

 さらに,ピタバスタチンには数々のpleiotropic effectがあることにも注目したいと思います。高コレステロール血症患者に1日1回1〜2mgのピタバスタチンを投与することで高感度CRP(hs- CRP)が37%減少したとの報告や,WHHLウサギのプラークにおいて,マクロファージを減らし,コラーゲン,平滑筋細胞を増やすことで,プラークエリアを減少させ,プラークを安定させるとの報告もあります(図3)。

 その他に興味深いことは,CYP450でほとんど代謝されない点です。多剤服用患者の薬物相互作用を考えますと,CYP450のなかでも特に3A4において代謝されないということは,それだけで患者さんにメリットのある薬剤であると思われます。

 臨床的には,冠動脈イベントの予測マーカーとして注目されているCRPについても,その測定の位置付けが今後のガイドラインで明記されるようになっていくと思われますので,ピタバスタチンのような,優れたLDL-C低下作用とともに抗炎症作用を有するスタチンに期待したいと思います。ご清聴ありがとうございます。

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