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Medical Tribune特別企画

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Medical Tribune 2006年01月05日号特別企画より転載

特別企画●今後望まれるスタチンを考える

特別企画●今後望まれるスタチンを考える

スタチンはLDL-コレステロール(LDL-C)を低下させるだけではなく、血管に直接作用することで抗動脈硬化作用を発揮すると考えられており、これを支持する研究結果も多数報告されている。本座談会では、第一線で活躍されている循環器専門の先生方に、スタチンの脂質低下作用、ならびに抗動脈硬化作用の可能性について、最新の研究成績を交えて話し合っていただいた。

司会 出席者(発言順)    
秋田大学 内科学講座 循環器内科学分野・呼吸器内科学分野 教授 伊藤 宏 氏 千葉大学大学院 循環病態医科学 教授 小室 一成 氏 信州大学 循環器内科 教授 池田 宇一 氏 慶應義塾大学 再生医学講座 教授 福田 恵一 氏 東京医科歯科大学 難治疾患研究所 先端分子医学 研究部門 教授 古川 哲史 氏
秋田大学
内科学講座
循環器内科学分野・
呼吸器内科学分野
教授
伊藤 宏 氏
千葉大学大学院
循環病態医科学
教授
小室 一成 氏
信州大学
循環器内科
教授
池田 宇一 氏
慶應義塾大学
再生医学講座
教授
福田 恵一 氏
東京医科歯科大学
難治疾患研究所
先端分子医学
研究部門
教授
古川 哲史 氏

スタチン本来の作用:コレステロール低下作用

伊藤 世界初のスタチン、プラバスタチンの発売から16年が経ち、国内では現在、6種類のスタチンが販売されています。スタチンはコレステロール低下薬ですが、これまで多くの大規模臨床試験で心血管病の一次・二次予防に有効であることが明らかにされており、この効果にはコレステロール低下作用だけでなく、いわゆるpleiotropic effectも関与していると考えられております。本日は、スタチンについて本来のコレステロール低下作用と併せてpleiotropic effectについてもご討論いただき、また最近注目されているピタバスタチンについても触れていただきたいと思います。
 まず、小室先生、スタチンの脂質低下作用についてお話しいただけますか。

小室 スタチンはコレステロール低下作用を有する薬剤として開発されてきましたが、近年高脂血症の治療では、患者のもつリスクに応じた脂質低下療法が求められるようになってきました。高脂血症治療の実態を調査したアンケート、 LiMAP(Lipid Management Program)によると、対象となった1,332例の約半数が、動脈硬化性疾患診療ガイドラインの患者カテゴリーB3以上の冠動脈疾患のハイリスク患者、すなわち強力なコレステロール低下療法を必要とする患者であることがわかっています(図1)。ハイリスク患者に対する各スタチンの効果をLDL-C管理目標値到達率でみた場合、スタチン全体では28.1%しか目標値に達していませんでしたが、ピタバスタチンの到達率は40%以上でした。このピタバスタチンの脂質改善作用ですが、LDL-Cで40%、総コレステロール(TC)で28%低下させます(図2)。また、HDL-コレステロール(HDL-C)が低い低HDL-C血症患者やトリグリセリド(TG)が高い高TG血症患者ほど、改善作用が高いのが特徴です。最近の

大規模臨床試験によって、LDL-Cはより低下させる方が良いことが証明されていますから、強力にLDL-Cを低下させる薬剤が、スタチン本来の目的を達成するという意味で今後望まれる薬剤であると思います。またメタボリックシンドロームの診断基準が発表され、低HDL-C血症、高TG血症を改善することの重要性も改めて注目されています。総合的に血清脂質を改善するという点からみてもピタバスタチンは高コレステロール血症の治療に有用な薬剤といえるでしょう。

スタチンのpleiotropic effectについて考える

伊藤 スタチンは脂質改善作用に加えて、血管に対する多面的効果、いわゆるpleiotropic effectが数多く報告されています。池田先生、スタチンのpleiotropic effectについてご説明ください。

池田 血管内皮機能の改善作用で、スタチンがeNOSを活性化することはよく知られています。そのほかに、炎症や単球の接着・遊走を抑制する作用やプラークの安定化作用も報告されています。ピタバスタチンではヒトの培養血管内皮細胞において、血管に特異的な炎症マーカーであるPTX3のmRNA発現を抑えるという報告があります(図3)。また、急性冠症候群を考えた場合には血栓形成も重要ですが、PAI-1の抑制やトロンボモジュリン(TM)の増加などの血栓形成抑制作用もあります。同様に、血管の弛緩や収縮に関わるメディエーターのmRNAを誘導または抑制する報告もあり(図4)、ピタバスタチンはpleiotropic effectの観点からも抗動脈硬化作用が期待できます。

伊藤 抗炎症作用のお話しが出ましたが、最近、スタチンが心不全に有効であるとする報告がいくつも出されています。私たちもピタバスタチンの心不全に対する効果の検討を行っております。各種の心疾患を有する高コレステロール血症患者31例にピタバスタチン2mg/日を3ヵ月間投与した結果、TCは投与1ヵ月目より有意に低下し、それに加えBNPについても、投与3ヵ月目において有意な低下が確認されました(図5)。ご存じのとおり、BNPは心不全の重症度マーカーとして有用なものです。また心エコー図を調べたところ、興味深いことに、拡張能を示すE/A比において有意な改善が認められました。福田先生はスタチンの心不全に対する作用についてどうお考えですか。

福田 スタチンの心不全に対する効果については、大規模臨床試験4Sのサブ解析において、心筋梗塞後にスタチンを使った群において心不全が改善したという報告が最初だと思います。その後、メカニズムの解析が進み、活性酸素種(ROS)やサイトカインの抑制による抗炎症作用が心不全に効くメカニズムの一つと考えられています。例えば、心不全ではNYHA(New York Heart Association)の心機能分類が重症になればなるほど、TNF-αやインターロイキン-6などの炎症性サイトカインが上昇しますが、ピタバスタチンがこれらの上昇を抑制する結果も得られています。

伊藤 心不全に対する作用に関してはまだ不明な点が多いのですが、今後の研究結果が注目されます。古川先生、pleiotropic effectという観点から、先生のご専門の不整脈に対するスタチンの効果についてはいかがですか。

古川 今まであまり注目されてきませんでしたが、ここ数年の間に、スタチンが虚血再灌流性の致死的な心室性不整脈の発生頻度を40%程度下げるなど、標準的な抗不整脈薬に匹敵する作用が報告されています。また、最近特に注目されているのが心房細動に対する作用です。日本は高齢社会を迎え、心房細動による脳塞栓などが大きな問題となっています。今までは、リモデリングが起こったイオンチャネルをターゲットとした薬を使って不整脈を治療してきました。これを「ダウンストリームの治療」と呼びますが、この治療の限界がだんだん見えてきたため、リモデリングが起こる上流の治療、「アップストリームの治療」をした方がよいのではないか、といわれています。ピタバスタチンを始め、各スタチンでリモデリングに対する効果が報告されていますので、スタチンの作用はアップストリームの治療につながるのではないかと期待しています。

伊藤 スタチンが血管病変に有効であることが最初にわかり、その後、心筋の病気である心不全、そして不整脈に対する有効性も少しずつわかってきたということですね。

今後はスタチンの臨床的なpleiotropic effectに期待する

伊藤 最後に小室先生から、今後のスタチンに何を望まれるかお話しいただけませんか。

小室 改めて言うまでもなく、スタチンは本来の目的であるLDL-Cを強力に低下させる作用が第一に望まれます。Pleiotropic effectにも期待しますが、臨床での有効性は証明されていないため、実際には意見が分かれると思います。例えば、酸化ストレスが心不全の病態に重要な役割を演じているのは間違いないと思いますが、薬剤によって酸化ストレスをスカベンジする能力がなぜ違うのかという詳細は明らかにされていません。今後はこういうところを明らかにすることで、

pleiotropic effectをより望めるスタチンに期待が集まるのではないでしょうか。現時点において、ピタバスタチンは2つの意味で大変有用な薬剤であると思います。それは脂質を総合的に改善するため、スタチンに要求される本来の目的に最も合致している点と、pleiotropic effectが非常に強いことを示唆する様々な基礎的な研究報告があるということです。現在わが国で使われているスタチンのなかでは、ピタバスタチンは極めて有望な薬剤であると思います。

伊藤 日本初の全合成スタチンであるピタバスタチンは今後、優れた脂質改善作用とともに pleiotropic effectに関しても、その注目度がさらに増すものと思われます。これからの研究が発展することを祈って、本日の座談会を終わりたいと思います。ありがとうございました。

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