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Medical Tribune特別企画

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コレステロール代謝に関する今後の展望 PDF
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Medical Tribune 2006年02月16日号特別企画より転載

各疾患領域からみたHDL-コレステロールの重要性とアプローチ

  • 糖尿病領域と循環器領域からみた低HDL-コレステロール血症
  • コレステロール代謝に関する今後の展望
司会
大阪大学大学院 医学系研究科 内科学講座 循環器内科学 助教授 山下 静也 氏 大阪大学大学院
医学系研究科
内科学講座
循環器内科学
助教授
山下 静也 氏
出席者(発言順)
東京大学大学院 医学系研究科 臨床分子疫学講座 助教授 後藤田 貴也 氏 東京大学大学院
医学系研究科
臨床分子疫学講座
助教授
後藤田 貴也 氏
神戸大学大学院 医学系研究科 循環呼吸器病態学 講師 平田 健一 氏 神戸大学大学院
医学系研究科
循環呼吸器病態学
講師
平田 健一 氏

冠動脈疾患(CHD)の危険因子である低HDL-コレステロール(HDL-C)血症のとらえ方は疾患領域で異なる。糖尿病では、インスリン抵抗性に伴うリポ蛋白リパーゼ(LPL)活性の低下が引き起こす特有の脂質代謝異常として、循環器領域では、コレステロールの逆転送系の担い手としての重要性が注目される。いずれの領域においても、 CHDの発症を抑制するためには、積極的な脂質低下とともにHDL-Cにも着目した治療が望まれ、HDL-C上昇作用を有するスタチンもその選択肢の1つと考えられる。その作用メカニズムや今後の低HDL-C血症治療に対する展望について、前回に引き続き、山下静也氏の司会のもと、平田健一氏と後藤田貴也氏にお話しを伺った。

高LDL-C血症を伴う低HDL-C血症には、HDL-C上昇作用を有するピタバスタチンが有用

山下 前回のお話しでは、糖尿病やメタボリックシンドローム、CHDでも、HDL-Cが低いことがリスクになると伺いました。それではどのように低HDL-C血症を治療したらよいのでしょうか。

平田 難しい質問ですが、今までのエビデンスから、低HDL-C血症に高トリグリセリド (TG)血症と高LDL-コレステロール(LDL-C)血症を合併しているCHDの一次・二次予防にはスタチンを選択することが多いと思います。特にスタチンにHDL-Cを上昇させる作用があれば、非常に役に立ちますね。もちろん、TGが高くてHDL-Cが低い患者さんにはフィブラート製剤を使うことになると思いますが、LDL-CもTGも高くてHDL-Cが低いという患者さんの場合には、やはりHDL-C上昇作用のあるスタチンの方が使いやすいと思います。

後藤田 代謝の分野でも、メタボリックシンドロームや糖尿病のようにTGとHDL-Cの両者が異常な場合には、フィブラート製剤やニコチン酸か高用量スタチンを使うことをアメリカ糖尿病学会では推奨しています。平田先生がおっしゃったように、メカニズム的にはフィブラート製剤が一番合うと思いますが、少なくとも今までの大規模臨床研究では、スタチンの良好な結果が際立っています。昨年11月に発表されたFIELD(Fenofibrate Intervention and Event Lowering in Diabetes)というフェノフィブラートを使った2型糖尿病の介入試験では、非致死的心筋梗塞とCHD死からなる一次エンドポイントがポジティブに出ないという予想外の結果でした。その大きな原因は、プラセボ群におけるスタチンの使用頻度が高かったためとされています。ですから、現在までのエビデンスからは、脂質プロファイル全体を改善するようなスタチンが最優先で適応されるべきだと思います。

山下 スタチンがHDLに及ぼす作用にはどのようなものがありますか。

平田 代表的なものとして、HDLの主要な構成蛋白であるアポA-Iの産生を高める作用(図1)があります。その他に、コレステロールエステル転送蛋白(CETP)の活性阻害や血管内皮リパーゼ(EL)産生抑制もHDL-C上昇作用に寄与すると考えられています。ただ、これらの作用は、いずれもスタチンに共通するRhoを介した作用だと思うのですが、なぜスタチン間でHDL-C上昇作用にばらつきがあるのかは説明がつかないのです。

山下 後藤田先生はどうお考えですか。

後藤田 厳密な意味で比較しているわけではないので、客観的な評価は難しいと思いますが、例えばストロングスタチンであるピタバスタチンでは、アポA-IやABCA1などの分子メカニズムにおいて有効性を示唆するデータが集積しており(図2)、また臨床的にもHDL-Cの上昇作用が優れていると感じています。

平田 我々の経験ですが、興味深いことに、従来のスタチンではLDL-Cが下がるとき、一時的にHDL-Cも下がることが多かったのですが、ピタバスタチンでは、LDL-Cが下がった症例でもHDL-Cは最初のうちはあまり変わらず、長期にわたって少しずつ上昇することを経験します。

山下 今までの話しをまとめますと、フィブラート製剤もsmall dense LDLの改善、レムナントの減少、HDL-CやアポA-Iを増やすという報告がありますので、治療の選択肢に挙がるでしょう。ただ、LDL-CとTGが高くてHDL-Cが低い症例に対しては、スタチンがファーストチョイスになると思います。スタチンとフィブラート製剤の併用は、海外の大規模スタディでは行われているものの、副作用の点から使いにくいですね。

後藤田 メタボリックシンドロームでいえば、体重の是正、特に内臓脂肪を減らすことが大切だと思います。その他に運動や禁煙も必要です。

山下 つまり、食事療法と運動療法を併用した生活療法、禁煙、内臓脂肪型肥満、あるいは肥満がなくても内臓脂肪蓄積の是正ですね。これらをベースに、LDL-CとTGの両者が高い患者さんにはスタチン、特にHDL-C上昇作用を有するピタバスタチンを使えば、LDL-CやTGを下げ、 HDL-Cを上げ、small dense LDLやレムナントなどの質的な脂質代謝異常も改善し(図3)、“一挙四得”になるのではないでしょうか。

低HDL-C血症治療におけるエビデンスの集積が必要である

山下 今後、低HDL-C血症はさらに注目を集めると思いますが、そのなかで新しい治療法として可能性のあるものは何でしょうか。

平田 HDL中のコレステロールをアポB含有リポ蛋白であるLDL, VLDLに転送する役割を担うCETP活性の低下により、HDL-Cが増加することから、CETP阻害薬は選択肢に入ってくると思います。また、タンジール病の原因遺伝子であるABCA1の発現を増加させ、コレステロールのエフラックス(汲み出し)を高める薬剤が創薬のターゲットとして重要視されると思います。そしてやはり、アポA-Iの産生を促進する薬が注目されるのではないかと思います。

山下 注意が必要なのは、HDL-Cが単に上がっていれば良いというものではなく、それによってコレステロールの汲み出しが高まっているかどうかということです。CETPを阻害すると高HDL-C血症になりますが、コレステロール逆転送系をブロックすることになってしまいます。CETP欠損症の症例でも動脈硬化を発症している場合もありますので、実際には、CETPを阻害してHDL-Cが上がったという状態で、本当に動脈硬化が抑制できるのかというエビデンスがないと、臨床には使いにくいと思います。その点、ピタバスタチンはHDL-Cを上昇させますが、コレステロールエフラックスを亢進させる作用(図4)も確認されているので期待できると思いますね。

平田 現状ではHDL-Cの量しか測定できないので、コレステロール逆転送系がどれだけスムーズに働いているかをみる指標があればよいのですが。

山下 本当はturnover studyをやればよいのでしょうが、日常臨床では難しいですね。アポA-Iミラノの投与やスタチンのHDL-C上昇作用がイベントの発症を抑制するというデータが集積されて、HDL-Cを上昇させる意義が明らかにされることを、今後の研究に期待したいと思います。本日はお忙しいところをお集まりいただきまして、ありがとうございました。

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